日本の農地は海外に比べれば肥沃であるという人がいます。

本当にそうでしょうか。

確かにスーパーに野菜が並ばない日はありませんし、不作・凶作のニュースがあってもおおよその農作物を入手することはできますから、誰も日本の農地に問題があるなんて思っていないかもしれません。

 

少し例を挙げてみましょう。

長野県塩尻市に洗馬(せば)地区という場所があります。

そこはレタスの出荷量日本一を誇っており、長野県の数ある生産地の中でも、最も早くレタス栽培が始まったといわれる地域のひとつです。

標高700m以上の場所に東京ドーム80個分ともいわれる広大な農地があり、見渡す限りレタスが栽培されている景色は実に壮観です。

そんな驚くべき規模で栽培をしているなら、洗馬地区の土はとてつもなく素晴らしい豊かなのだろうと考えるところです。

しかし、実はこのエリアの土が、昭和20年頃からの化成肥料と農薬を多用する効率化栽培を行ってきたせいで、ほぼ砂漠化直前の状態になっていることはあまり知られていません。

もちろん、昨今は堆肥や有機肥料の導入による土壌改良にも力を入れており、畑によっては地力が回復傾向にあるという報告もあるようですが、実際に3月の春一番風が吹く頃にこの洗馬地区を車で走ると、びっくりするような光景を目にすることがあるのです。

下の写真をご覧ください。

この写真は洗馬地区のレタス畑の中を通るとある幹線道路の風景です。

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空は晴れ、さんさんと太陽光が降り注ぐ穏やかな風景ですが、前方から霧のようなものが迫ってきます。

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ものの数秒で、辺りが真っ暗になり、車の窓ガラスに砂が降り積もります。激しい風と共に車のボディに雹や霰が当たるときのような音がし始め、視界が全く効かなくなります。

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これが日本の風景だとはだれが思うでしょうか。まだ、アメリカのテキサスかオーストラリアのビッグロックといわれた方が信ぴょう性があるのではないでしょうか。でも、これが真実です。

黄色い霧のようなものは、かつて畑の土だったもののなれの果てです。

かつては豊かな土壌に恵まれた素晴らしい生産地だったのですが、人間のエゴで、効率に効率を重ねた多重負荷がかかる栽培を延々と繰り返した結果、土が本来の性質を失い、砂のような状態に劣化してしまったのです。

砂が春の強風に煽られ、天高く舞い、霧のようになって地上に降り注ぐその景色は、農業の在り方を変えなければならないと訴える自然の叫びであり、警告であるような気がしてなりません。

また、この現象は、市街地からわずか5Kmほどしか離れていない場所で発生しています。砂丘や海辺の話ではありません。あなたのおうちのすぐ近くでも起きる可能性のある異常現象なのです。

土づくりの重要性を軽く考えて、今さえ良ければいいという気持ちで田畑を正しくない方法で使っていると、遠くない未来に日本各地の田畑は、この事例と同じ状態になっていくでしょう。

少なくとも、地球から借り預かった土壌を生産性のみを追求して破壊しているのが農業の本質であると認識できる人ならば、土壌改良(土づくり)がいかに重要かに気付けるはずです。

日本の田畑の土は豊かではない、これは誰が何と言おうと事実なのです。

農作物がたくさん採れるから豊かなのではありません。

農作物を作っても土を劣化させない土づくり技術を耕す人自身が実践できるようになって初めて、田畑の土は豊かになるのです。