有機栽培と化成栽培。

この二つの違いを、使う肥料の種類の違いだけだと思ったら大間違いです。

もちろん肥料として有機と化成は違うものですが、重要な点は植物に吸収されるまでの仕組みが違うということです。

 

化成肥料は、いわば栄養剤点滴のようなものだと言えます。

植物の成長に必要な各種の栄養分を植物が使えるであろうと想定される形に人為的に整えて、植物に与えようとするものです。

植物に直接的に栄養を与えることができるため、土の上で農作物を育てる場合だけでなく、水耕栽培のような方式にも利用が可能な方法です。

 

一方有機肥料は、調理前の生肉や生魚、野菜などのようなものだと考えるとわかりやすいかもしれません。生肉や生魚でもそのまま食べる民族がいたり、寿司のような食べ方もあるのですが、いずれにしても消化されてはじめて栄養分になる点で、料理の素材を調理して食べやすくする必要があるものであると考えることができます。実際に有機肥料を田畑に施用したけれど植物が全然元気にならないという事例が起きることがあり、これは有機肥料が植物に取り込まれやすい形に変化させられていないのが原因と言われます。

また、有機物が消化・変換されて生み出される栄養分には、非常に微量だけれどとても重要な栄養分もあり、それが植物の生育にとって必須であったりすることから、化成肥料に含まれる栄養分だけでは補充しきれない栄養素や酵素まで摂取できる点で、より高度な栄養補給方法だといえます。

 

また、有機肥料を栄養化して農作物に取り込ませようとする場合、勝手に有機肥料が栄養に変化してくれるわけではありません。有機物を分解あるいは変換し、植物が取り込めるように加工する料理人のような存在が必要です。この料理人は数が多い程、効率的に栄養分を生産することができますが、実際には一般の畑にはあまり多く存在していません。

化成肥料に含まれる栄養分を植物が取り込むには、有機肥料が栄養化される時のような料理人のような存在は必要ありません。

投入した肥料の分だけ植物が使える栄養分としてすぐに土に届きます。ところが、化成の場合は、あくまで人為的に調整された無機物質が土壌に送り込まれるだけなので、植物がそれを利用しようとするまでのほんの短い間に様々な化学変化を生じてしまいます。

例えば、化成肥料は土壌に入るとその土の中に含まれている様々な物質と勝手に結合したり、急激に酸化されてしまったりして、植物の栄養として適さない別の物質に変化してしまうことがあります。

この別の物質に変化してしまう現象が起きると植物はその物質を栄養成分として利用できなくなってしまいます。

さらに化成肥料の多くは水に溶けやすい性質を持っており、土の中に長い時間定着することができず、ちょっとした雨が降るだけで、施用した土壌から地下水に流亡してしまうことも多々あります。そのため、化成肥料を植物が利用できる割合は、最大でも3割に満たないと言われており、便利ではあるけれど、環境汚染の原因にもなっていると言われています。

その点、有機肥料の場合は、植物の成長に合わせて有機物を分解し、流亡を最小限に抑えて栄養分として提供することができます。

 

1クッション挟む形にはなりますが、環境にも優しく、無駄も少ないのが有機栽培の特徴です。化成肥料を用いることが悪いということではありませんが、こればかり使う栽培をしていると土の中の料理人は仕事がなくなってしまい、土の中からいなくなってしまいます。

料理人のいなくなった土は、極めて短い期間で砂のような状態に変化してしまい、土としての役割を果たさなくなってしまいます。

 

有機と化成の違いとは、資材や肥料の何を使うかということではなく、生産者の自然環境に対する考え方のあらわれであると言えるかもしれません。