微生物資材という触れ込みで販売されている商品は迷うくらいいろいろありますが、それらを選択する上で重要なポイントが、『中に入っている微生物の種類の数』だということをご存じない方は意外に多いようです。

微生物資材というくらいですから、それぞれのメーカーごとに優れた機能を持った微生物を選定し、こだわりの効果について説明していることが多いです。しかし、機能そのものも重要ではあるんですが、何種類くらいの微生物が入っているのかということにも注意が必要です。パッケージに明示されているかをご確認ください。

普通に考えて、微生物資材というからには、目的の現象(地質改良や傷病抑制など)に対応する微生物が自然界よりはるかに多い量で含有されているはずです。

何も不思議はない、当然のことだ・・・と思われるかもしれませんが、植物傷病が起こる理由の80%以上は病原性の微生物に起因するもので、土中などでその微生物が異常増殖した結果発生するということを考えると、非自然的な数量の微生物を土中に入れることはかなり危険なことだといえるのではないでしょうか。もしかすると、資材中の膨大な量の微生物が何か悪さをしないとも限りません。

識者の方の中には、微生物式の農業資材を安易に農地へ使用することは、自然破壊につながる行為だとする人もいます。これはどういう意味でしょうか。問題を解決するために問題解決能力を持つ微生物を農地に入れる・・・しかし、それが自然環境の破壊になる・・・微生物資材は危険かもしれない・・・ということでしょうか。

簡単に言うと、微生物が土壌に及ぼす影響は大きいということは誰もが解っているけれど、単純な問題解決のために強力な効果を持つ微生物を入れるのは本当に安全なことなのかどうか、ということなんですね。

ここで重要になるのは、使う微生物資材に含まれる微生物が①単種(1種)②数種(2~9種)③複数種(10種以上)のどこにあてはまるかを考えてみることです。

前述したとおり、植物の病気というのはたった1種類の病原微生物が異常増殖することによって、引き起こされます。しかし、本来土の中には微生物同士が影響しあってバランスをとる『多様性』という状況があって、この多様性が維持される限り、おいそれとは病原性微生物が増殖することなどできないことです。

悪いことをするのを止めようとするものが必ずいる訳です。

バランスが取れている畑の土に、病原性微生物を駆逐したり、低活性化させる機能を持っているからと言って、単種の微生物を大量に投入したらどうなるでしょうか。人間でも薬効の強い薬を処方する際には、胃薬などの影響を受ける臓器への影響を抑えるための薬が同時処方されます。それを目的の異常を解決する為だけに行うとすれば、いくらいい効果を持っているとはいえ、ともすれば目的の異常は解消できても別のところに異常を起こしてしまうことだって十分にあり得ます。それが引き金になって、地域的な凶作が起こる可能性も否定できません。

要はバランスなのです。

土壌というものは、数多くの微生物が手を取り合うことで、微妙なバランスの上に成立しています。もともとある土壌のバランスをできる限り壊さないように少しずつ調整し、病害や異常を発生させないようにしていくためには売られている資材商品の状態の時に、複数種類の微生物を含有していて、バランスがちゃんと取れていることが大切なのです。

もちろん、使用者のおかれた環境によっては劇薬的な資材により、短期間に解決しなければならない状況もあるでしょうが、単種あるいは数種の微生物が含有されると説明される資材などを用いると、その突出した単種あるいは数種の微生物によって、土壌生態系の多様性が失われ、かえって植物の成長に悪い状況ができてしまう可能性があることを知っておく必要があるでしょう。

微生物が入っていればなんでも同じ・・・という訳ではないのです。

また微生物の優れている/優れていない・・・も重要ではありません。もちろん優れた機能があるには越したことはありませんが。

資材に含まれる微生物が、土に入る前からきちんと共生し、すでに多様性を作りだしていればそれが一番安心して使える資材だということになるのです。土に入ってから多様性を作りだすのでは少し遅いといえます。

なので、「特許を取った○○菌が土壌の××の問題を解決」というような触れ込みの資材には注意が必要です。微生物は非常に排他的な生物で、簡単に突出します。多様性を崩すということです。何種類もの微生物を共存させ、バランスをとることはその種類が多くなるほど非常に困難になります。特許を取っていようとも優れた機能を研究室などで確認しようとも自然界においてはほとんど役に立たない微生物が沢山あります。

多様性を持つ資材を見分けるには少なくとも10種以上の微生物の共存を実現していることを明示し、自然界の調整力に近い形で農地の土のバランスを整えてくれるような微生物資材が安心して使えるものだといえるでしょう。