『とことんこだわりぬいた農作物をお届けします』

こんなメッセージを農作物販売者が表示していることがあります。

こだわりぬく以上、無農薬・無化成肥料で、手入れもしっかりしているのだろうな・・・と思うのが普通ですが、農作物の生産者のこだわりというのは、実は消費者が期待するそれとは大きくかけ離れていることが多々あります。

例えば、ミニトマト。

夏になると特に店頭の数が増え、150gくらいで200円前後で売られているアレです。

minitomato01

これが一般的な農家で作られた場合、主な出荷先となる農協の買い取り価格はいくらでしょうか?

500円/Kg だそうです。(普通に聞くと出所についてはあまり言えないのでご勘弁ください。と言われるのが現実です)

これに加え、輸送費だとか選果費だとか販売手数料とか取られる上に、農協が設定する規格に合わせたもの(色、大きさ等)しか買い取ってもらえないそうです。

買い取ってもらえない規格外品が30%以上出るため、道の駅やスーパーなど農協以外の販売先を常に検討していないと経営自体が立ち行かないそうです。

実際には、規格外であっても農協より高値で買い取ってくださる仲卸業者さんなんかもいるので、アンチ農協な生産者はこちらと専売契約してしまう方も見えるようですが。

と、話が横にそれました。

要は、農作物の品質にこだわりぬいて生産を行っても、市場がこだわったものに値段をつけてくれない仕組みになっているんですね。

自動車の例で、トヨタのアリストという車(現在は廃番)と、レクサスのGSという車は同じシャシーで同じエンジンだったのですが、レクサスの生産ラインでは、ドアの閉まり方やネジの締め方、塗装の精度や厚みなど、すべての点でトヨタのアリストの生産ラインより高いレベルで作られていました。そのこだわりの精度や性能が、同じ車でありながら数百万の価格差となって表れていました。

車の時は消費者は納得してくれたわけですが、これが農作物となるとそう簡単ではなくなるのです。

農薬を使わず、有機肥料、それも完全熟成したものを選び抜いて使い、土づくりにも相当苦労しているような状況で、本当においしい農作物を作られる生産者は確かに存在します。

果物などの付加価値品に限らず、日常的な葉野菜や根菜類においても滋味深い味わいを感じられるものが、有機JAS野菜専門店などで辛うじて入手ができます。

しかし、そこまでこだわっているにもかかわらず、販売価格は通常スーパーにおいてあるものと同じか、せいぜい1.5倍程度。これではこだわりの生産者は生活していけません。

先ほどのミニトマトの農協買取価格が公称500円/kgと言いましたが、生産にかかるコストで節約を重ねていても実際には6~700円/kgほどかかります。

やりくりしてトントンにしているのでしょうが、生産者の工夫の先にいる流通業者さんや販売者さんたちが同じように努力をしているかというと、実はそうでもないことが分かってきます。

もちろん実店舗を構えて直接作ったモノを直売形式で販売している人もいるにはいるのですが、そういった場合でも苦労した割には得られるものはさほど多くない上に既得権益者たちの横槍がいろいろと入って商売しにくいことはこの上ないそうで、結局最後は、貴重な生産者の熱意が冷めきってしまうことが多くあるのです。

酷い場合は、完全有機で作ったものが、化学肥料をたっぷり使ったスカスカのものと選果場で混ぜられてしまう場合も多々あり、もう2度とこだわり野菜など作るかと思ってしまう生産者も多いのだとか。

数を揃えることに必死な流通業者の意向が大きく反映される今の市場構造では、「こだわる」ことは悪いことのようにとらえられてしまっているんですね。

生産者の生活を支える仕組みがもっときちんと作られれば、生産者は安心して高い品質の農作物づくりに取り組めるようになるのですが、現状は非常に残念なことになってしまっているのです。